事業として成立する分野と難しい分野|支出とリターンの4分類


自分は2012年後半から、水環境改善という公共財部分と、システムやAI等複数事業の構築展開をしてきた。
それらの経験から、「ソーシャルビジネス」といった分野にも事業として成り立つ分野と成り立たない(成り立ちにくい)分野があることをが整理できたので共有。

端的に表すと、以下の図で表現できる。

縦領域は、個人の支払分のリターンが、すべて個人返ってくるか、来ないか。
横領域は、そのリターンが今なのか、将来なのか。

①支払=全受益 × リターン:今 がビジネスとして確実に成り立つ分野。
スーパーやレストラン、家購入や賃貸、車や美容品、釣りなどのレジャーなどなど。
ソーシャルビジネスで有名になっているボーダレスジャパンやマザーハウスは、この分野で、ニーズ側は資金余裕のある購入者、提供側を社会問題抱える主体、を繋げる高付加価値製品にて成功させている(妊婦向け紅茶や、おしゃれなグッズ等)。

②支払=全受益 × リターン:将来 は、主に教育分野。
この分野は、将来期待または不安に対する提供として、塾や習い事がある。医者になるなら小学校、もしくは幼稚園から親は教育投資する。
ただ、ここにお金を払うのは、教育の価値を知っていて、一定の余裕がある層である。
例えば明治以前の農民だと、学校行くより畑の手伝いをしろ!と学校に行く価値さえ認めなかった人の話が色々記述残っている。ネットも新聞さえもない時代で、教育の価値が広く知られていなかったためである。
この分野で難しいのは、例えば教育がもたらす本質的価値(メタ認知や探求心、学ぶこと自体の楽しみ、人生の選択肢を増やす等)を提供する事業を展開しようとしたときに、理解出来る人にしか響かず、本当に提供したいそれらに気づいていない人には、その人が価値を感じていないからお金を払ってもらえないことである。
この本質的ギャップを埋めるのに多くのソーシャル分野の事業者、活動者は苦しんでいると思う。

③ 支払≠全受益 × リターン:現在 は主に公共財分野となる。
道路、公園、消防、警察、河川、自然等。
自分が関わってきている一社)ClearWaterProjectの対象もここになる。貧困家庭の支援もセーフティーネットとしてここに含まれる。
この分野は基本インフラとして、100払ったから100返ってくるわけではない。川で泳ぐのは、私有地でもない限り、そもそも個人が100払っても他の人はタダで入ったりできるからである(フリーライダー問題)。
この分野の資金の出し手は行政か、もしくは寄附に頼ることになる。
ただ、個人的には今の日本では行政が機能不全に陥っている部分が多くあり、そこが出来ないことをやろうとするとお金の出し手がいなくなる。
貧困支援は、人直接への支援で、ある意味「かわいそう」という同情心と共に寄附を集めやすい分野だと考える(ファンドレイジング分野でも、人支援系は割合が多い認識。パッと根拠データ出てこないので知っている人は教えてください)。

(一社)ClearWaterProjectは、(株)creatoと両輪経営をして一部資金を活用することで、ビジネス→税→行政執行→市民享受 のような社会の仕組みのミニ版を実装している。(TNFDの流れもビジネス分野での事業者が自然資本等にも影響していることを意識して対応すべき、という流れ組み込みの一つだと認識しているが、そんな枠無くても自主的にやってほしいものである)。

④ 支払≠全受益 × リターン:将来 は 政治や宗教分野、だと思っている。
自分の信じる社会をつくっていくことに貢献する、ということになるかと。この分野はまだ大きくは関連していないのであまりコメントも出来ないが。

これらを個人支出とリターンのイメージ図として記載してみたのは以下。参考になれば。


これは自身の整理フレームワークとしての共有だけど、自分がやろうとしていること、及び自分の知り合い等がやろうとしてることがどういう分野なのかを把握していると、善意ながらも的野外れたアドバイスをすることは少なくなり、純粋に手助けすべきことは何かも理解しやすいかもしれない。