給与制度を整える最初の段階から、株式会社creato(クリート)では『自己給与決定制度』を実行してきた。
最初は4年目の2017年だったはずなので、6年実施してきている。
振り返りも兼ねて記載する。本記事は制度構築経緯について。
【前職経験値】
前職給与制度>
・360度評価。評価してほしい人は自分で4人以上選んで決める。(きちんと評価できそうな人を選ぶ)←後からジェネラルマネージャーがその評価者をチェックする体制を追加(身内で評価高くしてくれそうな人を選ぶ人がいたためと想定される)
・会社が選択した5つ+2つほど(後者2つは年によって変わる。5つはなぜなぜ思考、コンティンジェンシープラン、他責NG等仕事におけるその会社での基本能力)の項目に対し、評価者は6~14の点数でなるべく差が出るように被評価者を評価。
・人事側にいたわけではないので正確にはわからないが、マネージャークラスの評価は加重加点されるような形で調整されていた様子。
個人的感想>
・新卒入社ではあるが、他組織では上司による人事考課 が一般的だった時に、上記360度評価は新鮮。個人的には納得度の高い評価だった。(人事系ERPベンダーだったため、他社給与制度も色々目にして聞くこともできたため、比較できた)
・一方で、数字である程度システム的に評価するため、配属されるチームによって評価が変わってくる。点数が甘いチームだと評価が上がりやすくなる傾向が見て取れたため、過去この点不満を感じた覚えあり。
・①他人から評価される、ということ自体
②それに給与が結びつくことに完全に納得はしきれなかった。
(評価が高く満足している人は問題ないため、今振り返ると評価されるだけの価値を出していなかったかもしれないが、評価を客観的に振り返れるフィードバックがなかったことは一つ要因かもしれない)
全体としては、かなり良い制度だとは思っていたが、それでも一定の不満は出る。根本的に全員が納得できる給与・報酬制度なんてないのでは、とは思っていた。
【給与自己決定のアイディア】
・過去経験で、他人に評価される、ということと、それに給与が結びつくことで評価自体に納得はしきれないことがあった。(一面では正しいことも多かったとも思うが)
→組織における「人事考課」「給与制度」は、そもそも外から自分を評価されること、及びそれに給与を紐づけることで、組織のため「働かせる」仕組みであることを基軸にした制度である。
(もちろん、もう一つ組織として重視する能力を評価軸とすることで希望の人材を育てる、という機能もあるが、必然的に前出の仕組みにもなってしまう)
生存欲求に働きかける制度
他者の評価による承認欲求に働きかける制度
人の幸福を考えたときに、「働かされる」より「働く」方が本質的に幸せでは?と考えると、自分で決めて自分から「働く」ことをコミットできる仕組みができないか?と考えていた。
人は食べなければ生きていけないから、身体は美味しさを感じることで必要な栄養を取るインセンティブを持たせている。自身の体からの欲求のためこれは自発的。
給与も、大部分の人にとって今の世界で生活していくのに必要なもの。そこに自発性を持たせるには、学んで出来るようになることがうれしい「学習欲」、問題解決の「達成欲」、人や社会に役に立っている「貢献欲」等をベースとして感じられる仕組みや制度にしたいと思っていた。
そんな中、リカルド・セムラー著の文庫本「セムラーイズム」に出会い、「自己給与決定制度」を実施していることを知り、なんて理想的・合理的な制度だ、と思った。
組織にとって、黒字運営は事業継続の必須条件。各種必要支払いの上、残った分で人件費と、税金、株主配分、利益、が残る。
人件費は売上以上には支払いようがないことが大前提。
逆から見ると、黒字(税・株主配分・利益)に出来ていれば、その残りで人件費決められれば良い。(会計上で正確に言うと、経常利益+役員報酬含む人件費 が人件費として支出出来る最大範囲)。
実際、自分が起業した後、株主総会の2/3以上の意思決定権を持っているため、自分で報酬を決めてきた。
自分の報酬を上げるより、その分を採用・人件費に当てて1人力を2人力、2人力を4人力と、一緒に仕事出来る仲間を増やした方が出来ることが増えたし、その後の収益ボリュームが上がるため、報酬より先に投資を。収益が上がってきたら報酬も上げた。
もちろん全体として赤字であれば率先して自身の報酬は下げた。
それと同じ感覚を各人が持てれば、多くの事業家が育ち、結果として組織としても事業が多く伸びるのではないかと。
事業を作れる人は、より利益額を多く残せる人となるので、より多い給与を決めてもらえばよい。
給与に話を戻すと、売上内でしか本質的に支払えないので、条件が満たされれば各人が出来ない理由は無いはず。
→その条件としては、現状では 自主性、誠実、利他、勤勉、事業採算意識 が必須だと考えている(ソフト面)。
次記事では、具体的な現状制度と、現状までで出てきた課題について記載する。